多くの企業では業務効率化を狙い、Webデータベースを検討されているのではないでしょうか。
実際に企業の40%ほどではWebデータベースを導入しており、30%ほどの企業が導入を検討しているといった調査結果も出ています。
筆者自身もWebデータベースを提案していた経験があるため、この経験をもとに市場に数多く存在するWebデータベースを厳選してどのような特長やコンセプトを持っているのか徹底的に比較したいと思います!
Webデータベースとは
まずWebデータベースの定義を確認しましょう!
IT系比較サイトITreviewでは下記と定義しています。
Webデータベースとは「従来のデータベースの操作から管理までをWebブラウザを用いて行えるようにするサービス」である。
今回は特定の用途に特化したSFA・CRMは比較対象から外し、汎用性が高いデータベースシステムを中心に比較したいと思います。
Webデータベースの導入が進む理由
Webデータベースの導入が進む背景は「IT人材不足」「レガシーシステムのメンテナンス問題」「DX」の3つが挙げられます。
1つ目の「IT人材不足」は企業のIT化・DX化に対して、そのスピード感に合うだけの人材が足りてない状況が考えられます。Webデータベースはノーコード・ローコードで開発できるものが多く、開発者のスキルに依存しない開発の容易さ・開発の短期間化が魅力的なツールです。技術者のリソースが足りていない企業ではヒトや時間の問題を解決できることから採用する企業が増えています。
2つ目は「レガシーシステムのメンテナンス問題」です。社内にはスクラッチで組まれた基幹システムやExcel、Access、Lotus Notesといった業務系のアプリケーションが存在しています。これらのツールの中には開発者の退職や属人化といった理由からメンテナンスができなくなりブラックボックス化したものが存在します。機能要件を棚卸してメンテナンス性が高く簡易に移行できるシステムとしてWebデータベースが選ばれることがあります!
3つ目は「DX」です。外部環境が激しく変化する現代ではビジネスの変化も激しく、ビジネスと同じスピード感で変化できるシステムを使うことが求められています。正しくデータ管理ができてビジネスを支えることができるシステムとしてWebデータベースがDX化には相性抜群なのです!
情報システム部門を取り巻く環境はDX化を進める上でまさに過渡期ではないでしょうか!?
つまり、Webデータベースは多忙な情報システム部門を助ける役割を担い、ITスキルの乏しい現場部門で実行できるDX化ツールです。
※アナログな業務をWebデータベース化するメリットを下記の記事でまとめています。
おすすめのWebデータベースを徹底比較
次の内容についてはさまざまなITレビューサイトや試用版、マニュアル、そして実際に私が利用して得た経験をもとにした比較情報となります!あくまでも参考情報として確認してください。
kintone(おすすめ度3.5)
kintoneはサイボウズ株式会社にて開発・販売されているWebデータベースです。導入企業数も30,000社(2024/09/13)にまで登るほど拡大しています。半年で2,500社増えるほど拡大の速さにも驚きです!
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 2011年11月〜 |
サービス体系 | クラウドサービス(リージョンは日本で、東日本・西日本にデータセンターあり) |
ライセンス | 1ユーザーあたりライトコース 1,000円/スタンダードコース 1,800円 ※最小契約数10ユーザーから( |
対応言語 | 日本語、英語、中国語に対応 |
コミュニティ | kintone hive、cybozu developerコミュニティ |
【特徴】
入力フォームを構築するイメージでパーツを配置すれば簡単にアプリケーションが構築できます。市民開発を進める企業としては開発者の意欲次第でかなりシステム化が図れるサービスだと考えます。
また、トヨクモ社やリコー社から魅力的なプラグインが提供されており拡張機能のバリエーションの多さも魅力的です。プラグインの使い方次第でユーザーコストを抑えたり、プログラミングなしに機能を拡張できるのは非常にありがたいですね。
kintoneの評価は非常に高いと判断する一方で、「全社展開するにはユーザー数が多くなり費用が高くなってしまう」「標準機能ではワークフローが組みにくい」といった改善点も上がっています。
Webデータベースの強みは汎用性の高さや利用用途の広げやすさです。利用ユーザーが増えるとコストもかかるため簡単にユーザーを増やすことが難しいのだと考えます!
また、データベースのデータ管理はあるものの、条件が分岐するようなワークフローシステムまでは作りづらいという評価があります。kintoneにはワークフロー機能として「プロセス管理」という機能があります。このプロセス管理がデータフローのみを意識した作りになっており、ユーザービリティが少し弱いのが気になる点です。また、プロセス機能の承認者設定でも一手間かかりそうな印象です。
さらに、日本の商習慣で求められるExcelとの親和性ではCSVのインポート/エクスポート機能はあるものの、Excel帳票への出力は標準で対応しておらず追加プラグインが必要となります。
コストが増える要素がいくつかあるようですね
しかし、導入企業も多くユーザー同士で交流して問題を解決できるコミュニティや風習があることは非常に魅力的です。ベンダー企業の視点にはない運用方法やユーザーとしてリアルな使い方など情報を手に入れやすいのはkintoneの素晴らしい点です!
「できる・できない」「組みやすそう・組みにくそう」という感覚は個人の見解やITリテラシーにもよりますが、公開されているkintoneの基本マニュアルや体験版を通じて確認してください。
楽楽販売(おすすめ度4.0)
楽楽販売は株式会社ラクスが開発・販売を行うサービスになり、販売管理を中心とした機能構成になっています。2023年現在では3,500社(2023年9月時点)ほどの導入実績があります。最近では楽楽販売のCMも見かけるようになりましたね。
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 不明(働くDBの後継サービス) |
サービス体系 | クラウドサービス(リージョンは大阪・その他不明) |
ライセンス | 初期費用150,000円+70,000円 |
対応言語 | 日本語のみ対応 |
コミュニティ | なし・サポートコミュニティあり |
【特徴】
楽楽販売はkintoneと同様にドラッグ&ドロップの要領で入力フォームを構築することでシステムが完成するツールです。
そして、楽楽販売の最大の強みは自動処理機能になります。今では当たり前のようなツールですがRPAのように人の手を介さないデータ処理が可能となっています。
自動処理機能の具体例としては次のようなことが挙げられます。
- 営業案件の確度がBからAに変化すると自動的に営業部長にメールを送る。
- 営業案件を受注に変更すると顧客データ側のステータスが新規顧客から既存顧客に書き変わる。
項目の変更やチェックにより他データベースの処理を実行できるので人のミスをなくし、よりシステマチックに運用することが可能です。
データ管理以外に業務の自動化ができる点はかなり魅力的だと感じます。
また、拡張性も非常に高くExcelへの入出力やPDFへの出力も可能です。さらにAPI開発による他システムとの連携も可能なのでデータのサイロ化を防ぐことができるのです。
サイロ化とはシステムとして「独立・孤立した状態(データ連携されていないなど)」のことを指します。
気になる点としてはドラッグ&ドロップで組み立ていくツールであるにも関わらず「構築がしづらい」「UI/UXが良くない」といった意見が挙がっている点です。実際、kintoneやUnitBaseに比べて直感的に操作しづらいという声をお客様から聞いたことがあります。ある程度データベースに知識がある人が触るツールなのかもしれません。
SmartDB(おすすめ度4.0)
SmartDBは、株式会社ドリームアーツ社が開発・販売を手がけるWebデータベースです。コンセプトとしては「大企業の業務デジタル化クラウド」ということで、大規模ユーザー向けのサービス展開をしている高級ツールになります。
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 2010年5月12日 (当初は「ひびきSm@rt DB」という製品名) |
サービス体系 | クラウドサービス(リージョン不明) |
ライセンス | 500名までは月額50万円、1ユーザーあたり9,000円など複数の情報あり |
対応言語 | 日本語、英語、中国語 |
コミュニティ | HubFanMeeting、スマコミュ! |
【特徴】
SmartDBもドラッグ&ドロップの要領でデータベースを構築できるようです。特にワークフローも細かく業務に沿って構築できる点が魅力的です。一般的なWebデータベースでは条件分岐はあるものの、1つの申請であらかじめ設定された1つの承認ルートを通ります。つまり、一般的なWebデータベースでは承認ルートを稟議途中で複数に分けることや途中で承認ルートを変更することはできません。
わかりやすく理解するために、決裁を行うアプリケーションを構築するケースで考えてみましょう。
SmartDBで1つの受注申請を行います。受注時には自分の上司である①営業部長に受注の承認をしてもらいます。一方で受注したことを技術部門にも連携する必要があるため、②技術部長へと回覧を回します。この①と②の稟議を同時に回すことができます。
さらに申請者がどこまで承認を取る必要があるかわからない場合では承認者がその後の決裁者を設定することができます。
データベースという使い方だけでなくワークフローシステムとしてもかなり融通が効く点は高級Webデータベースって感じですね!
また、楽楽販売の特徴でもある自動処理機能も実装されており、Webデータベースの中では群を抜いた機能性と言えるでしょう!
気になる点としては価格になります。ターゲットが大企業のため高価格帯になっており、なかなか手を出しづらい企業もあるのではないでしょうか。また、費用対効果を出すためにはそれだけの業務改善が求められます。
Powerapps(おすすめ度3.0/開発力が高い企業では4.5)
PowerappsはMicrosoft社が提供するMicrosoft Dynamic365もしくはOffice365で利用できるWebデータベースになります。
Office365を契約されている企業であればプランの範囲内で利用でき手早くWebデータベースを扱いたい企業や組織には非常に有用です。また、スタンドアローンでも利用が可能です。
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 2016年11月〜 |
サービス体系 | クラウドサービス |
ライセンス | Microsoft Dynamic 365もしくはOffice365を契約していれば無償 スタンドアローンの場合は2,170円/1ユーザー |
対応言語 | 日本語、英語、その他言語 |
コミュニティ | 公式ユーザーコミュニティはないが有志でのコミュニティあり |
【特徴】
Office365を全社利用しているユーザーにとっては最速かつコストを抑えて導入できるWebデータベースです。そして、技術力が高い会社であればちょっとした業務システムをPowerapps上で作ることができるでしょう。
また、データテーブルをPowerapps(Sharepoint)独自に持つこともできればExcelやSpredsheetなど外部リソースを利用することも可能です。
ユーザーにはPowerappsを使ってもらいながら裏ではアプリケーションの用途にあった開発やプラグインを加えることができ、サブシステムとして柔軟性が非常に高いです。
しかし、筆者自身が感じた懸念事項としては英語ベースでの開発であることと1つ1つの機能が理解しづらく開発するためには開発者としてのリテラシーが他製品よりも求められることです。市民開発を進めたい企業では現場部門から嫌われるのではないかと感じました。
一方で、Office365を導入している企業は非常に多いという日本企業の実態があります。Powerappsを開発できるスキルを身につければ、現場での業務効率化だけでなく転職後や異動後にDX化を進めていく人材として重宝されることは間違いないでしょう。
Powerapps初心者向けの書籍も出ているので学習はしやすいかもしれませんね!
FileMaker(おすすめ度2.5)
FileMakerはクラリス社が開発・販売を行う外資系のWebデータベースになります。
FileMakerはWebデータベースの老舗と言っても過言ではないほど先見的なサービスを展開してきました。販売開始時はファイル形式のツールでしたが、現在ではサーバで処理を行うものからクラウドサービスまで幅広くサービス体系を広げています。
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 1985年4月〜 |
サービス体系 | ファイル形式、サーバー型(オンプレミス)、クラウドサービス |
ライセンス | Essential:1ユーザー月額2,150円〜/Standard:1ユーザー月額4,400円〜 (詳細はこちら) |
対応言語 | 日本語、英語、その他言語 |
コミュニティ | Clarisコミュニティ |
【特徴】
FileMakerの良さはネットワーク環境につながっていないローカル環境でも作業ができることです。ただし、このような状況になることが自体が限られているため、魅力を感じるのは一部の業務だけかもしれません。
Lotus Notesのようにクラサバっぽく使えるイメージですかね。
FileMakerの基本的なインプット・アウトプットはGUIで行うかCSVの連携になります。一部のユーザーではCSVに出力した後、VBAを使ってExcel帳票自動的に作る運用を行なっているようです。クラウドの場合はAPIが用意されているため、API使った他システムとの連携やワークフロー処理が実現できます。
FileMakerの気になる点としてはシステムとして設計思想が開発者寄りであり市民開発するには難易度が高いことです。現場部門の方がサクッと作成するツールではないのかもしれません。
また、一部の医療関係ではFileMakerの利用が非常に多いと聞いています。業界内でテンプレートを共有し合うこともできるので簡単にアプリケーションを利用できることは強みかもしれません。
UnitBase(おすすめ度3.0)
UnitBaseはジャストシステム社が開発・販売を手掛けるWebデータベースになります。現在は1,500社ほどの導入実績を持っており、各サービスの中でも唯一のオンプレミスのみでライセンスを展開しています。
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 2011年11月〜 |
サービス体系 | オンプレミスのみ |
ライセンス | 同時ログインユーザー10/1,990,000円(別途保守費用あり) |
対応言語 | 日本語、英語 |
コミュニティ | なし |
【特徴】
UnitBaseは今では数少ないオンプレ環境でも利用できるWebデータベースになります。さらにライセンス自体はプログラムで提供されるため、AWSやAzureといったIaaS環境で運用することもできます。
UnitBaseとしての最大の魅力は圧倒的なUIの良さです。日本語変換ソフトである「ATOK」やワープロソフト「一太郎」を開発していたこともあり、ユーザーへの馴染みやすさはWebデータベースの中でも秀でていると感じます。
また、データベース機能に加えてワークフロー機能やオプションの基幹システムとの連携機能もあり、これら全てノーコードで提供されています。市民開発を進めていきたい企業や特定の部門の中だけでIT化を進めていきたい企業なら良い線までいけるでしょう。
UnitBaseの気になる点としては、ノーコードであるため「APIを用意していない」「データベースに他システムがアクセスできない」といった制限があることです。
小難しいことがない分、開発思考は現場寄りですね!
大企業がWebデータベースとして全社的に利用するには拡張性が気になるかもしれません。
楽々Webデータベース(おすすめ度3.0)
楽々Webデータベースは、住友電工情報システム社は開発・販売を行うWebデータベースです。
「楽々Flamework」や全文検索ソリューション「QuickSolution」など、企業にとって必要なシステムを常に開発してきた住友電工情報システムにとって新しい製品となります。
【製品情報】
内容 | 詳細 |
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サービスイン | 2018年10月〜 |
サービス体系 | クラウドサービス、オンプレミス |
ライセンス | 1,500円/1ユーザー、もしくは、1,800,000円/同時ログインユーザー10 |
言語 | 日本語、英語 |
コミュニティ | なし |
【特徴】
楽々WebデータベースはWebデータベース界ではかなり後発の製品となります。しかし、上記でも記載したように住友電工情報システム社の誇る数多のソリューションから生まれた導入実績からクロスセルで中小企業を中心に導入が進んでいます。
機能として一般的なデータ管理からワークフロー、帳票出力機能、システム連携機能を持っています。
同社の狙いとしては既に展開している楽々Flameworkと棲み分けを狙っているのではないかと考えます。楽々Flameworkの開発費用と楽々Webデータベースでの導入および市民開発を比較したときに、開発の難易度が高いものは楽々Flameworkで、難易度が低いものは内製化できる楽々Webデータベースで対応するという選択ができますね。
楽々Webデータベースの気になる点としては、まだまだ導入実績が少ない点と他社製品と比べて特徴が見えづらいことが挙げられます。
気になる方はこちらにマニュアルを載せていますので確認してみてください。
まとめ
これらのサービスは常にサービスをアップデートしています。
いつの間にかそのサービス向けのAPIが開発された、新しい機能がついたなんてことは頻繁にあります。本記事でもこれらのアップデート情報をしっかりと更新していきたいと思います。
また、2023年のWebデータベース市場シェア実態を確認したい方はこちらの記事から確認してみてください。